薬物療法を適切に、安全に進めることは、医療提供者や患者様にとって大切な事です。
人間がかかわる以上、事故の起こる可能性をゼロにすることは極めて難しいことです。それでも私たちは限りなくゼロに近づけることを目指し、日々取り組んでいます。
具体的な活動の一つは、「ヒヤリハット報告と活用」です。
労働災害における経験則のひとつ「ハインリッヒの法則」では、1つの重大災害や重大な事故1件につき、軽微な事故が29件、さらにその背後に隠れた事故寸前の案件、つまり、ヒヤッとしたり、ハッとした事態が300件あるとされています。
「ヒヤリハット報告」とは、ハインリッヒの法則の300件にあたる体験を報告し、事例共有や対策を立てることで、事故の原因そのものを減らしたり、よりよい薬局医療に生かそうとする取り組みです。
当社では、医療安全支援室を設置して「ヒヤリハット報告」をつぶさに分析、現場の知恵を活用しながら対策を講じています。
「ヒヤリハット事例」の分析は当社だけではなく、東京大学と共同でより深く、広範囲な研究を行っています。この研究にかかせない現場の生々しい実例は、全国にある当社の薬局から日々集められます。
「ヒヤリハット事例」と言うと、医薬品の取り違いとか数え間違いをイメージされる方が多いのですが、それだけではありません。薬局薬剤師と患者様とのかかわりの中で、適正な処方チェック・薬学的患者ケアを実践して有害反応・治療効果不十分、精神的不安、経済的損失などを回避あるいは軽減した事例なども含まれ、生活習慣など患者さまを取り巻く環境まで目配せしながらヒヤッとしたり、ハッと気づいた実例が報告されます。
それを様々な経験をもつ薬剤師が解析・討論する事により新しい知識へと生まれ変わり、各薬局薬剤師へ配信されてゆきます。若い薬剤師は、この事例を読むことで追体験ができます。実際の業務の中で「気づく」ことができるようになり、事故の未然防止などにつながっています。
医療安全支援室では、「安全思想」の啓蒙活動を社内各処で行い、この活動を活性化させ続けています。
これら日々の取り組みを形あるものにしたいとの思いから、当社では学会発表を奨励しています。
東京大学との共同研究の成果は、有志の薬剤師が教授の指導の下で論文執筆し、学会にて発表を行っています。現場ならではの問題意識や、薬局におけるより良い医療提供の在り方を発信することも、当社の重要な役割と位置づけています。